便潜血検査とは?
便潜血検査は、肉眼では見えないごくわずかな血液が便中に含まれているかどうかを調べる検査です。便が真っ赤な「血便」であればすぐに異変に気づけますが、微量な出血では見た目には分からないことが多いため、この検査で初めて異常が判明することがあります。
微量の血液を検出しやすくするために、「2日法」がよく用いられます。これは1日1回の便採取を2日間行う方法で、より高い精度が期待できます。便中の血液は時間が経つと残存率が低下するため、検査の1週間以内に採取した便を使用することが推奨されています。
便潜血陽性が示すもの
「便潜血陽性」と判定された場合、これは「大腸のどこかに出血の原因がある」ことを意味します。消化管のどこかで出血が起きている可能性があり、その原因を特定するために追加の精密検査が必要になります。便潜血検査は、健康診断などで大腸がんのスクリーニング検査として広く利用されています。
便潜血陽性の原因となる病気
便潜血陽性となる原因は多岐にわたり、中には命に関わる重篤な病気が隠れている可能性もあります。
大腸がん
大腸や直腸に発生するがんで、初期の段階で便中に微量の血液が混じることがあります。便潜血検査は、大腸がんの初期の兆候を発見する上で重要な検査です。
大腸ポリープ(がんの芽)
大腸の粘膜にできる良性の腫瘍で、「がんの芽」とも呼ばれます。一部のポリープは将来的に大腸がんへ進行するリスクがあり、出血を伴っていれば便潜血陽性の原因となります。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の内側に炎症を引き起こし、出血の原因となる病気です。
大腸憩室(けいしつ)
大腸の壁にできる小さな袋状のへこみで、ここから出血することがあります。
虚血性大腸炎・感染性腸炎
大腸への血流が低下して炎症を起こす虚血性大腸炎や、ウイルス・細菌感染による感染性腸炎も、血便や便潜血陽性の原因となることがあります。
消化器系の潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍など、大腸以外の消化管からの出血が便に混じって便潜血陽性となることもあります。
出血性疾患や血管異常
血友病のような血液の凝固異常や、血管腫などの血管の構造的な異常が便潜血陽性の原因となることもあります。
痔
肛門からの出血である痔も、便潜血陽性の原因となることがあります。しかし、痔があるからといって、大腸の奥からの出血がないとは限りません。痔の症状があっても、念のため大腸内視鏡検査を受けることが重要です。
便潜血陽性と大腸がんの関係性
「便潜血陽性」という結果が出ても、必ずしも大腸がんとは限りません。痔が原因であったり、大腸ポリープなどの良性疾患であったりするケースも多く見られます。
ただし、便潜血陽性は、大腸がんの初期の兆候である可能性も否定できません。大腸がんが進行すると出血しやすくなるため、便潜血陽性をきっかけに早期発見に至るケースも多くあります。 ソースには具体的な大腸がんの確率を示す数値はありませんが、便潜血陽性という結果が出たからには、その出血源を特定し、もし病気が隠れていれば早期に治療を開始することが非常に重要です。自覚症状がなくても放置すると命に関わる可能性がある病気が隠れていることもあるため、リスクを把握するためにも、できるだけ早い段階で精密検査を受けることが強く推奨されます。
便潜血検査の限界と注意点
便潜血検査は有用なスクリーニング検査ですが、その限界と注意点も理解しておく必要があります。
「1回だけ陽性」でも
安心できない理由
「便潜血陽性」が1回だけだったとしても、決して安心はできません。たまたま陽性だったと思われがちですが、便潜血が1回だけ陽性だったとしても、大腸のどこかに出血の原因があることを意味するため、精密検査は非常に重要です。
陰性でも大腸がんの
リスクはゼロではない
便潜血検査は出血の有無を確認するものであり、出血のない場合でも大腸がんやその前段階の大腸ポリープが存在する可能性があります。特に、早期の大腸がんや大腸ポリープはまだ小さく、常に出血を伴わないことが多いため、検査結果が「陰性」であっても、大腸がんのリスクが完全にないとは言い切れません。リスクを正しく認識した上で、適切なタイミングで大腸カメラを受けていただくことが重要です。
特に女性が注意すべき点
(月経期間中の検査)
女性の場合、月経血が便に混入し、便潜血検査が陽性となるケースがあります。このため、月経期間中の検査は避け、終了から1週間ほど期間を空けてから便を採取することが推奨されます。 しかし、たとえ月経血が便潜血陽性の原因であったとしても、大腸の奥からの出血を否定することはできません。女性も大腸がんのリスクはあり、安易に自己判断してしまうと、重要な病気の発見が遅れてしまう可能性があります。月経期間ではない時期に再度検査を受けるか、直接消化器内科を受診し、医師の判断を仰ぐことが大切です。
便潜血陽性だったときの検査
便潜血陽性と診断された場合に、最も重要となるのが大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラです。大腸カメラは、便潜血陽性の原因となっている病気を正確に診断するための、最も信頼性の高い検査です。
なぜ精密検査が必要なのか
便潜血陽性は、消化管のどこかに出血があるサインであり、もし重大な病気(大腸がん、大腸ポリープなど)が隠れていれば、早期に発見し、適切な治療を開始することが重要です。自覚症状がないからと放置してしまうと、病状が進行し、命に関わる可能性もあります。
大腸カメラ検査の
重要性とメリット
確定診断
内視鏡で大腸の粘膜を直接観察し、出血の原因となっている病変を特定できます。必要に応じて組織を採取し、病理検査を行うことで、大腸がんや炎症性疾患などの確定診断が可能です。
早期発見・早期治療
大腸がんの前段階である大腸ポリープ(がんの芽)は、大腸カメラを行ったその場で検査と同時に切除できることが多いです。これにより、「がんの芽を摘む」ことができ、将来的な大腸がんのリスクを大幅に低減できます。もし大腸がんが見つかったとしても、早期であれば内視鏡で切除可能な場合もあります。
がん予防
大腸ポリープの切除は、大腸がんの予防に直接つながります。
便潜血検査の限界を補完
便潜血検査では見つけにくい早期の大腸がんやポリープも、大腸カメラであれば発見することができます。
特に大腸がんの発症リスクが高まる40歳以上の方は、自覚症状がなくても一度大腸カメラを受けてみることが推奨されています。
便潜血陽性と言われたら、
放置しないでください
「便潜血陽性」という結果は、ご自身の体の状態と向き合い、適切な精密検査を受けるための重要なサインです。放置せず、速やかに消化器内科を受診し、大腸カメラ検査を受けることを強くお勧めします。
当院では、便潜血陽性と診断された方に向けて、まず内視鏡事前診察で検査の必要性や流れを丁寧に説明し、患者様一人ひとりに寄り添ったサポートをいたします。 消化器内視鏡専門医である院長が、可能な限り苦痛を抑えた検査を追求していますので、大腸カメラに不安がある方もどうぞご安心ください。
便潜血陽性と診断された方は、ぜひ一度、お気軽に当院へご相談ください。 まずは内視鏡事前診察をご予約ください。
監修 池澤伸明
- 2006年
関西医科大学医学部医学科卒業 - 2006年-2008年
順天堂大学医学部附属順天堂医院にて
臨床研修医 - 2008年-2009年
さいたま赤十字病院 救急医学科 - 2009年-2012年
さいたま赤十字病院 消化器内科 - 2012年-2015年
国立がん研究センター中央病院
消化管内視鏡科レジデント - 2015年-2018年
明石医療センター 消化器内科 医長 - 2018年-2023年
神戸大学医学部附属病院 消化器内科 医員